亜鉛を短時間で毛髪に浸透させる、ヘアケア技術の開発に成功(2016.02.07)

「海のミルク」ともいわれる牡蠣に多く含まれる『亜鉛』。体内での働きっぷりは広範囲に及び、その八面六臂な活躍っぷりは他のミネラルの中でもずば抜けている。その亜鉛、実は毛髪にも重要な役割を担っているということが最新の研究で判明したとのことで、紹介していきたい。

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サンスターグループ ヘルス&ビューティーカンパニー(以下サンスター)は、椙山女学園大学生活科学部の上甲恭平教授の協力のもと、加齢とともに衰える髪質をケアする研究に取り組んできた結果、毛髪内の亜鉛と髪質(ハリコシ)との関係が明らかになり、亜鉛を毛髪に浸透させることで、衰えた髪質を回復する新しいヘアケア技術の開発に成功した。

【研究の背景】
加齢に伴い毛髪のハリコシが低下し、きれいにまとまらない、思い通りのヘアスタイルがつくりにくいという悩みが多くなってくる。従来はヘアスタイリング剤に含まれるワックス成分や高分子の乾燥皮膜で覆って毛髪表面を補強する方法が一般的だったが、手触りがごわごわする、といった感触が問題であった。サンスターは毛髪内部の構造を強化することで衰えた髪質を改善し、毛髪表面の感触は自然なまま、しなやかでかつハリコシのある毛髪を実現するためのヘアケア技術の開発を目指し、2009年から研究を進めていった。

【開発の経緯】
サンスターはまず、加齢とともに毛髪のハリコシが衰える原因は、毛髪の内部の構造が変化するためではないかと考え、様々な調査を行った。その結果、40代以降では毛髪内の亜鉛が減少することが判明し、〔1〕上甲恭平教授は亜鉛が羊毛の細胞膜複合体(以下CMC)に多く存在していることを報告がされた〔2〕。そこで、サンスターはこれらの知見に着目し、加齢とともにハリコシが低下するのは、毛髪のCMCに含まれる亜鉛が加齢により減少しているためではないかと考え、上甲恭平教授と研究を開始。

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【研究結果】
1)毛髪のハリコシと亜鉛の関係について
まず、毛髪のCMCに優先的に作用してその構造を変化させるギ酸という酸に毛髪を浸漬し、処理時間違いでハリコシの官能評価を実施。その結果、 ギ酸処理時間が長いほど毛髪のハリコシが減少し、ギ酸処理30分では有意にハリコシが減少する結果が得られた(図2)。さらに、これらの毛髪内の亜鉛 量を測定した結果、ギ酸処理時間が長いほど、毛髪内の亜鉛の量も減少していることが判明(図3)。このように、毛髪から亜鉛が減少すると、毛髪の ハリコシも減少することが明らかになった。

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2)亜鉛化合物の浸透と毛髪内の亜鉛の確認
加齢により減少するハリコシの低下は40代以降に緩やかに起こることから、サンスターはギ酸での浸漬時間の短い処理毛髪(15分間)を加齢モデル毛に設定。そして、加齢モデル毛に対し、亜鉛化合物による亜鉛の浸透を試みた。その結果、加齢モデル毛にグルコン酸亜鉛水溶液(図中、GluZn水と略)を1時間浸透させることで、加齢モデル毛で起きたハリコシの低下が、有意に向上することを確認した(図4)。

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サンスターは次に、毛髪内のどこに、どれくらいの量の亜鉛が浸透したかを確認するため、高エネルギー加速器研究機構の放射光科学研究施設「フォトンファクトリー」の協力の元、蛍光X線分析を実施。そして、官能評価でハリコシの向上がみられたグルコン酸亜鉛水溶液で処理した毛髪では、キューティクル層の内側に多く、亜鉛が浸透していることを確認した(図5)。

 

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さらに、後から毛髪に浸透させた亜鉛が毛髪内でどのような構造になっているのかを確認するため、フォトンファクトリーのX線吸収微細構造解析で確認。その結果、浸透させた亜鉛は、もともと毛髪内で存在していた亜鉛と同じ構造となって毛髪内のアミノ酸等と結合していると考えられたことから、この構造が毛髪のハリコシに関与していることを見出した。

3)イオン化による浸透促進技術
サンスターは最後に、短時間ではキューティクル層の内側に浸透しにくい亜鉛の浸透を促進させる技術の開発に取り組んだ。そして、亜鉛の浸透を促進する方法としてイオンに着目し、亜鉛を含む薬剤にイオンを付加することで、毛髪のキューティクル層の内側への亜鉛の浸透が促進され、短時間の処理で有意にハリコシ改善効果を実感できることを確認した(図6)。 [テキスト ボックス: 図3.ミストの帯電量測定]

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これらの研究成果は2014年10月にパリで開催された国際化粧品技術者会会議「IFSCC 2014 Congress」(IFSCC= The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists)にてポスター発表された。また、毛髪の物性の解析方法等の基礎研究成果は繊維機械学会誌(Vol.61, No.4, 2015)に掲載された他、亜鉛が毛髪内で形成する局所構造の解析の詳細については、フォトンファクトリーのホームページ内「Photon Factory Activity Report 2015」(http://www2.kek.jp/imss/pf/science/publ/acrpubl.html)で掲載される予定となっている。
今後、これらの研究成果を活かして、いつまでも美しく、若々しい毛髪を保つヘアケア製品の開発を進め、髪の健康を考え、健康な髪が持つ美しさを追求していくとのこと。

参照文献
〔1〕ANTI-AGING MEDICINE(日本抗加齢医学会雑誌) 4(1),38-42,2007
〔2〕繊維製品消費科学 55(10),50-55,2014

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