今年も注目の「発酵鍋」〜管理栄養士が解説する健康メリットと絶品レシピ(2021.12.25)
コロナ禍でさらに健康志向が高まり、発酵食品を日常的に取り入れる機会も多いのではないだろうか。ヨーグルトや納豆が多いと思われるが、味噌や甘酒などの日本伝統の発酵食品も栄養面の評価が高く、見直されている。その発酵食品を鍋料理に取り入れる「発酵鍋」のトレンドが数年前から続いている。
そこで今回は、発酵鍋にマッチする味噌と甘酒を用いた発酵鍋に期待できる健康効果を、発酵食に詳しい管理栄養士に解説してもらう。最後には、長野県発の味噌メーカーひかり味噌が提供する発酵鍋レシピを2つご紹介。この冬、ぜひ美味しくいただこう。
■発酵鍋とは
(ひかり味噌提供)
2019年頃に、トレンド鍋として脚光を浴びた発酵鍋。具材や付けだれに、味噌やキムチ、ヨーグルトや納豆、甘酒などの発酵食品を用いる鍋だ。
その具材の自由度は高く、何らかの発酵食品が使われていれば発酵鍋と呼ぶが、特に味噌や甘酒は鍋の具材に合いやすく、発酵食品が持つ味わい深い甘味や旨味は、鍋のアクセントに適している。
その発酵鍋について、どんな健康効果が期待できるのか、今回は味噌と甘酒を用いた発酵鍋について紹介する。
■味噌と甘酒の健康効果
まずは、味噌と甘酒それぞれについて、単体での健康効果を、管理栄養士で発酵食スペシャリストの矢崎海里氏に解説してもらった。
●味噌の健康効果
「味噌は『畑の肉』とも呼ばれ、良質なたんぱく質などを含む大豆を原料に作られています。製造過程で熟成・発酵されることにより、アミノ酸やミネラルが多く生成されます。カリウム、カルシウム、ビタミンB群などが補えるほか、食物繊維も含んでいます。食物繊維は発酵食品に含まれる善玉菌と同じく、腸内環境を整える役割や便秘予防、免疫機能維持などにはたらきます。
またイソフラボンやレシチンなど、大豆由来の成分も含まれています。イソフラボンは、骨粗鬆症予防に効果が期待されています。レシチンはリン脂質の一種で、血中コレステロールを調整するはたらきがあり、生活習慣病予防につながるといわれています」
●甘酒の健康効果
「甘酒は『飲む美容液』と称され、含まれるビタミンB群が肌の健康を保つはたらきをしてくれます。皮脂分泌の抑制やニキビ・黒ずみ・毛穴などの肌トラブル予防にもおすすめです。
発酵食品に含まれる善玉菌は、腸内環境を整えるはたらきや便秘予防、食べ物の消化・吸収を助ける効果も期待できます。また免疫機能に関わる細胞の7割は腸内にあり、発酵食品などで腸内環境を整えることにより、免疫機能の維持にはたらきます。ウイルスや細菌から身を守るのに有効です。
甘酒は米糀(こめこうじ)から作られたものと、酒粕(さけかす)から作られるものがあります。酒粕甘酒は酒粕に水、砂糖を加えて作られますが、米糀甘酒は糀の優しい甘さを活かして砂糖不使用で作られているのが特徴です。購入する際は、成分表示を確認して、砂糖不使用のものを選ぶとよいでしょう」
■味噌や甘酒を発酵鍋に使うメリット
単体でも健康、及び美容効果が期待できる味噌や甘酒。発酵鍋に使うことで、どのようなメリットが期待できるのか。
「甘酒や味噌に含まれる糀の旨味や甘さは、鍋の味わいを引き立てます。だしを使わなくても鍋つゆとして美味しくなるほか、一緒に入れる野菜や魚介、肉の旨味も引き出してくれます。味噌や甘酒以外にも塩麹、チーズ、納豆なども入れることで、飽きずに楽しめます。
また発酵食品には、肉をやわらかくするはたらきもあるので、鍋に入れる鶏肉や牛肉もやわらかくしっとりと仕上げてくれます」
■味噌や甘酒の発酵鍋におすすめの具材
味噌や甘酒を使った発酵鍋には、どんな具材を合わせるのかおすすめだろうか。矢崎氏は次の2種類を挙げる。
●根菜類
「大根、ごぼう、れんこん、にんじんなどの根菜類には食物繊維が多く含まれています。発酵食品と合わせて腸内環境を整えてくれます。他にじゃがいもやさつまいもなどのいも類や、エリンギやえのきだけなどのきのこ類、加熱するとかさが減るキャベツや小松菜などもおすすめです。どの食材も食物繊維をしっかり補えます」
●チーズ、キムチ
「鍋と相性のよい発酵食品として、チーズやキムチもおすすめです。チーズはプロセスチーズではなく、モッツァレラやチェダーなどナチュラルチーズを選ぶのがおすすめです」
■味噌と甘酒を使った発酵鍋レシピ2選
ここで、具体的な発酵鍋の例として、2つのレシピを紹介する。ひかり味噌のオリジナル発酵鍋レシピを見ていこう。
1.「甘酒味噌しゃぶしゃぶの発酵鍋」
甘酒ベースのスープでゆでたしゃぶしゃぶ肉を、味噌と甘酒を使用したごまだれにつけていただく発酵鍋。甘酒を入れたスープでゆでることで、肉も野菜もやわらかく香り立ち、ふわりとしたコクを楽しめるという。
【材料】(2人分)
・豚肉(しゃぶしゃぶ用):150g
・えのきだけ:1/2袋
・レタス:1/2個
・舞茸:1パック
・長ねぎ:1本
・小ねぎ:1パック
・小松菜: 1/2本
・かつお節:20g
(A)スープ
・『朝のむ あまざけ※』:600ml
・水 :200ml
・昆布(15cm程度) :1枚
(B)つけだれ
・オーガニック味噌『こだわってます※』:大さじ2
・すりごま:50g
・『朝のむ あまざけ※』:50ml
・酢:大さじ2
※ひかり味噌の商品。他の甘酒や味噌製品でも代用可能。
【作り方】 調理時間:30分以上
(1)鍋に(A)の材料を入れて30分置く。
(2)レタスは大きめにちぎる。長ねぎは斜め薄切りにする。小松菜は根を切り落とし、半分に切る。えのきだけと舞茸は石づきを取り除き、適当な大きさに手でちぎる。小ねぎは小口切りにする。
(3)(B)の材料を混ぜ合わせて味噌ごまだれを作り、器に注ぐ。
(4)(1)を加熱し、沸騰直前で昆布を取り出す。野菜や豚肉を加えて、火の通ったものから味噌ごまだれにつけて食べる。お好みで、小ねぎや鰹節をたっぷりとのせて食べる。
2.「ひき肉のミルフィーユ 発酵鍋」
冬の定番、ミルフィーユ鍋も、発酵鍋にアレンジ可能。コク旨な「みそ肉だね」により、白菜が甘く、肉がホロッとほどけて幸せの味に。
【材料】(2人分)
・白菜:1/4個
・鶏ひき肉:300g
・生しいたけ:2枚
・長ねぎ:1/2本
・昆布だし:600ml
(A)
・溶き卵:1個分
・『無添加 円熟こうじみそ※』:大さじ2
・しょうゆ:小さじ1/2
・砂糖:少々
※ひかり味噌の商品。他の味噌製品でも代用可能。
【作り方】 調理時間:30分以上
(1)しいたけ、 長ねぎを粗みじん切りにしてボウルに入れ、鶏ひき肉(A)を加えてよく混ぜ合わせる。
(2)白菜を土鍋の高さに合わせて(5cm幅くらいに)切り、土鍋に立てて入れ、葉と葉の間にまんべんなく(1)を詰める。
(3)昆布だしを注ぎ、ふたをして火にかける。沸騰したら弱火にして15~20分煮る。
●ポイント
・みそ肉だねを、白菜の上にどーんとのせて、だしを加えず弱火でじっくり蒸し煮にしても美味しい。
・みそ肉だねは、肉だんごにして水炊き鍋に加えたり、揚げて大根おろしを添えたり、餃子のタネにしたりと多用途に活用できる。
今年も寒さが深まり、鍋が美味しく感じる時期がやってきた。この年末年始には、ぜひ健康・美容のためにも、発酵鍋を作ってみてはいかがだろうか。
取材協力/矢崎 海里氏
管理栄養士・発酵食スペシャリスト。大学卒業後、企業で管理栄養士として働く傍らWebメディアでコラム執筆、レシピ作成などを担当。
https://www.yazaki-kairi.com/
ひかり味噌株式会社
https://www.hikarimiso.co.jp/
取材・文/椎原あゆみ
