そうだったのか!専門家が指摘する〝あがり〟を克服する5つのポイント(2019.02.08)
プレゼンの度に緊張してあがってしまう、朝礼の1分間スピーチの出番が怖い、交渉の場で緊張する……そんな悩みを持つビジネスマンは意外に多いのではないか。
その場になると手が震える、大量に冷や汗をかく、発表の内容が“飛ぶ”など、自分ではどうにもできないのが緊張や“あがり”だ。
とはいえ誰もがここ一番というときには、緊張せずに実力を存分に発揮したいもの。そこで、あがり症に詳しく、多くのカウンセリング実績を持つ「佐藤たけはるカウンセリングオフィス」の佐藤先生にお話を伺った。
1.あがらないようにする特効薬はない?
「手のひらに〝人〟の字を書いて飲み込んだり、深呼吸をしてみたりと、人それぞれに対処法を持っていると思いますが、効き目のほどは怪しい。残酷なことを言うようですが、あがらないようにする対処法はありません」
緊張してあがるのは誰にでも多少はあることだ。だが、重症化すると『あがり症』となり、転職を繰り返したり引きこもったりと、生活に支障をきたす場合がある。
「こうなると社会不安障害と呼ばれる病気になりますが、多くの人の場合はこの限りではなく、発表など特定の場面だけに見られるものです」
2.“あがる”原因とは
そもそも人はなぜあがるのか。佐藤先生によると、緊張してあがるのはごく正常な反応であり、『上手くやろう』とすればするほどあがる傾向にあるという。
あがる人ほど上手くやろうと事前準備に余念がない。だが、事前準備やイメージトレーニングのやりすぎは、「かえって『あがること』に注目していることになり、いわば『あがるための準備』をしているようなものなのです」
緊張してあがるという状態は、実は“否定される恐怖”からくる。『もし失敗したら』『ダメなやつだと思われたら』『期待はずれと呆れられたら』。そんな不安が膨らんでしまう。
「つまり、人前で発表することを、無意識下で“自分自身の価値を試される”と捉えてしまうのです」
では、緊張しがちな人や、あがって資料が上手く読めない場合・頭の中が真っ白になってしまった場合はどうすればよいのだろうか。
3.あがった時はとりあえず「動く」
佐藤先生によれば、あがってしまったら固まらず、とりあえず動くことだという。
「たとえば頭が真っ白になってしまったら、『すみません、ちょっと(思考が)飛んでしまっておりまして……』などと言いながら資料をめくり、確認してみる。つまり実況中継をしてしまえばいいんです」
頭の中が真っ白になると、気持ちに余裕がなくなり進行が分からなくなることがある。だが、それを実況中継することで、落ち着きを取り戻せる。
「なにがしかでも言葉を発すれば場は動いており、その中で少し気持ちが収まって言うべきことが確認できたら『失礼しました』と再開すればいいのです」
真面目な人ほど『待たせている時間』も気にして焦るかもしれないが、聴衆にとってはほんの数秒のことで、本人が気にするほどは気に留めてないことがほとんどだ。
4.とりあえず場をつなぎ本来の目的に集中する
実況中継によって落ち着きを取り戻す方法のカラクリは、『目的に集中すること』で、自分の注意が緊張から別のものへ移されるからだという。
「傷ができてそこを気にしていると、ずっと痛いでしょう? けれど何かに集中していれば傷のことなど忘れてしまうんです」
あがり症を含む不安神経症の治療法として知られる森田療法では、不安による症状が出ても放っておき、とにかく作業などで身体を動かすことに集中させる。
プレゼンの場だとしたら、あがっていることはそのままにし、プレゼン内容を伝えることに集中するということだ。
5.あがりそうになったら本来の目的を確認する
プレゼンや朝礼スピーチなどで毎回あがり、人前で話すのが苦手だという人は、本来の目的を思い出すと良い。
“緊張する・あがる”とは、自分の心にベクトルが向いている状態だ。周囲の目を気にして、まるで自分を評価しているように感じているのだ。そのため「失敗してはならない」と余計に緊張する。
だが、本来の目的は、プレゼンなら聴衆に内容を伝えることであり、朝礼スピーチなら伝える力やコミュニケーション能力の向上だろう。
「あがることは放って置き、本来の目的を果たすことに注力することによって、あがることの意味などなくなってきます。むしろ、話し始めにあがるのは当然。その後は本題に集中すれば、あがっていたことなど忘れてしまうはずです」
【取材協力】
佐藤たけはるカウンセリングオフィス 佐藤健陽先生
(あがり症カウンセラー・アドラーカウンセラー・社会福祉士・精神保健福祉士)
自己肯定感を上げるワークショップやアドラー心理学に関する講座、キャリアデザインカウンセリング講座などを開催している。
著書:あがり症は治さなくていい
公式サイト:https://takeharukokoro.jp/
あがり症克服総合情報サイト:https://takeharukokoro.com/
取材・文/角舘有理
