もうプレゼンは怖くない!治らないと自覚することが〝あがり〟を克服する(2019.02.15)
人前で話す機会が多いビジネスマンの中には、「あがり症さえなければ100%の実力を出せるのに」と悔しい思いをする人も多いだろう。
悔しいだけならまだしも、人前で話すことが苦痛で、昇進を見送る人や転々と職を変える人もいると聞く。
だが、人と全く関わらずに済む仕事はなかなかない。あがり症の人の相談を受け付ける佐藤たけはるカウンセリングルームの佐藤先生のもとには、会社はおろか家族にも、自分のあがり症を秘密にしてカウンセリングに通うビジネスマンが多いという。
1.あがり症の人ほど完璧さを求める!?
では、具体的にはどんな人があがり症になりやすいのだろうか。佐藤先生は、次のように説明する。
「あがり症の人は、完璧主義で自分に過剰に厳しく、自分への理想がありえないほど高い。完璧でない自分を許せないのと同時に、周囲からの目も常に気にしています」
「またあがり症の人は、一見シャイで小心というイメージがありますが、シャイで小心な人は自分のダメな部分も受け入れているので、そもそも人前に出るのを避けています。
反対に、あがり症の人はダメな自分を認めません。それどころか、完璧を求めるエネルギーは、シャイで小心な人よりもあがり症の人のほうが、はるかに強いのです」
2.「あがり症を治したい」と切望するが…
ここで佐藤先生から、意外な発言が飛び出した。あがり症は投薬で軽減することはあっても、治癒するものではないという。
「こう言っては身も蓋もありませんが、あがり症の症状は治りません」
「あがり症は『注目の病』であり、人から注目されることを過剰に気にするということと、自分が“あがる”ことに注目してしまうのです。
誰でも多少なりとも『人にどう思われているか』が気になることはあります。ですが、あがり症の人は、ちょっとした他人の動作、たとえば視線を反らす、あくびをする、笑うなども自分のことを蔑んではいまいかと勘ぐってしまいます」
「そして、他人から良い評価をもらうため、より完璧を目指すため、エンドレスに自分のダメなところを探しては潰し、自分を追い詰めてしまうのです」
では、どうすればよいのか。佐藤先生が示す回答は?
3.あがり症とつきあっていく覚悟を決める
佐藤先生は、あがり症克服のセミナーなどであがる場面を疑似体験させ、「あがり方が足りない。もっとあがってください」とアドバイスするという。
「アドバイスされた側は必死にあがろうとしますが、ここであることに気づきます。『自分では意図してあがれない』ことに。
つまり、相談者は、あがり症は自分のコントロール下にはないことに気づくんです」
さらに、治らないと諦めることも重要だと話す。
「治療放棄かと思うかもしれないが、そうではありません。
森田療法研究所所長で精神科医の北西憲二(きたにしけんじ)医師が著書などで言っていますが、患者が『あがることは避けられない、無理なんだ』と行き詰まった時、逆にそれをチャンスと捉えるという発想。正に“窮すれば転ずる”で、それを機に開き直って改善することがあるといいます」
「自分の意図ではあがれないという気づきも、治らないと宣告されて諦めることも、『自分ではコントロールできないもの』として、一生つきあっていく覚悟ができるのかもしれません」
覚悟ができた途端、あがり症が治癒することが多く、これは理屈ではなく、体感した人にしか分からないものだという。
